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INTERVIEW 平野歩夢 まっさらな未来

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スノーボードとスケートボードに挑んだ平野歩夢の4年間が終わりを迎えた。彼の新たな物語はどこへ向かうのか、その胸中に迫る




【着用アイテム】
ドライEXクルーネックT(半袖)
ドライEXショートパンツ
※その他、スタイリスト私物




INTERVIEW


激闘の果てで今考えること
「オリンピック前の時期は、練習以外の生活の部分も本当に濃かったんです。滑っている時だけが練習ではなくて、朝起きてから夜寝るまでが練習、そういう考えで毎日を過ごしていました。極限まで自分を追い込んだあの時期があったから、最後の最後でパーフェクトなランを決める準備ができたんだと思います」
平野歩夢は冬季北京オリンピックの激闘に至る日々をそう振り返る。
今回、男子スノーボード・ハーフパイプ種目で注目を集めていたのが「トリプルコーク1440」というトリック。この成否がメダルを分かつ最大の焦点になると見られていたが、平野はその先を見据えて、トリプルコークの練習に取り組んでいた。
「それまでの大会で何回かトリプルコークに挑戦して失敗していたんですけど、そこで気づいたのは、次の技まで繋げられる完成度と高さ、そこまで精度を高めることが重要だということ。ハーフパイプは5〜6ヒット飛ぶ中でのトータルで競うので、単純にトリプルコークができればいいわけじゃないんです。自分も、成功しても次の技に繋がらなかったりしたので。単なるトリプルコークの習得ではなく、さらにその先をイメージして練習していました。他の選手もトリプルコークをやってくるかもしれないと思っていたけれど、高さと完成度では自分の方が上回っている確信があったので、前もってその部分の準備ができて本当に良かったです」
決勝で見せた観る者全てを納得させる圧倒的な滑りは、誰よりも準備を重視する彼の姿勢と限界を超えた努力が生んだものだった。スケートボードでの東京オリンピック出場からわずか半年での念願の金メダル。スケートボードの挑戦を表明した時から始まった、この4年間の二刀流の物語は最高の形で幕を閉じた。
帰国後も様々なメディア対応などで忙しい日々を過ごしている中、平野は今回のフォトセッションに臨んでくれた。
「普段は長いボトムを履くことが多いので、短パンのコーデは新鮮で、暖かい気候もあって気持ちよかったです。岩場で着た薄茶色のオープンカラーシャツは普段のスタイルに近かったので一番落ち着きましたね」
 幼い頃から服が好きだという平野だが、最近は新たなこだわりや興味も出てきているという。
「90年代あたりの少し昔の時代の感じが、今自分が落ち着くスタイルになっているんですけど、その中でもサイズ感とか色に、より古さを感じるものが好きになっています。今回着た黄色のチェックシャツとデニムの組み合わせもそういう部分を感じるので良かったです。あと最近は自分で服の丈を切ったり、身幅を出したり、ペイントしてみたり、服に手を加えることにハマってきていて。決して派手なものじゃなく、色はシンプルな組み合わせでも、自分なりのオリジナルなものを着ていたいという思いは強まっています」
オリンピックを終えてまだ1カ月という時期での取材だったが、平野にこの先の目標について今考えていることを訊いてみた。
「絶対に金メダルを獲るという気持ちで最初からいたので、実はオリンピック前からその先のことについては考え始めていたんです。ただ……いまだに決まらないんです。ここからまた長い道のりなので、そんなに簡単には決まらない。滑ることに関しては基本的にこれまでと変わらず取り組んでいきたいと思っていますけど、なんでも挑戦すればいいというわけでもないし、現実的に甘くない部分もあります。例えばスケートボードは活動の視野に入ってはいるけど、本格的にやるかどうかはまだしっかりとは考えていません。最初は東京オリンピックのために始めたものだったけど、それがクリアできれば、もっと上の結果を期待されるようになる。その期待に応えることだけが全てではないと思うので、冷静に判断していきたいです」
 むしろ競技以外の部分について今は考えることが多い、そう平野は続けた。
「自分が普段楽しめることを、少しずつ育てていきたい気持ちが強くあります。最終的にはそれが仕事に繋がっていけばいいと思うし、現役を退いた時に、次はそこに全てを充てられるようなものですね。自分の“横幅”をもっと広げていきたいと思っています。スノーボードは必然的に本気で取り組むので、やっぱり孤独にならなければいけない瞬間が訪れるんです。それが自分を成長させてくれるんですけど、そうではないこと。リラックスして楽しめて、本気になれること。今はそれを探しています」
金メダルを獲ってなお、挑戦者であり続ける平野歩夢。彼の中で新たな4年間の物語が、今ゆっくり始まろうとしている。
「さっき話した服のアレンジなんかもひとつの可能性とは思っているんですけど、そうしたアイデアのようなものは、携帯に2年ぐらい前からずっとメモしていて、結構溜まっているんです。いろいろアイデアがあって、何が良いのか考えすぎちゃうぐらい(笑)。でも、ビジネス的なことではないです。まずは自分のためにやっていけること。オリンピックで自分が周りの人以上のことができたのも、スノーボードとスケートボードの二刀流への挑戦を経て得た、今までの自分にない経験や負荷があったからこそだと思うんです。だから、この次はどんなことに挑戦するのか、その選択は間違えないようにしたいです」



平野歩夢
1998年新潟県生まれ。TOKIOインカラミ所属。今年の冬季北京オリンピックのスノーボード・ハーフパイプ種目で、金メダルを獲得。昨年の東京オリンピックではスケートボード・パーク種目に出場。2018年、ユニクログローバルブランドアンバサダーに就任。




【Staff Credit】
SWITCH 2022年5月号
PHOTOGRAPHY; WAKAGI SHINGO
STYLING; HASEGAWA AKIO
HAIR & MAKE-UP; KENSHIN
TEXT; HIRAKI TERUMASA


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